【地球について考える】
今回は、最近読んだ1冊の本からお話します。
ピエール・テイヤール・ド・シャルダンの著書【現象としての人間】です。
少し難しい話になりますが、とても「素晴らしい本」なので、ぜひ最後まで一読頂けると嬉しく思います。
著者のテイヤールさんは、「学者(地質学・天文学など)」でありながら、「カトリックの神父」という珍しい肩書きを持った人でした。
ご存知の方もいると思いますが、少し前までのキリスト教は「科学」を受け入れない体質がありました(今でも、その傾向はありますが)。
そのような時代に、「学者と神父」という相容れない立場の間にいた彼は、「科学を無視する訳にはいかないが、人が信仰を捨ててはならない」と考えていました。
※ 「無神論の思想を持った歴史的な人物」にはどういう人たちがいて、その人たちが何をしたのか、ということを知っておくと、彼の想いがわかりやすいと思います。
そんな彼が、生前に書き残した本が【現象としての人間】です。
◼️【地球上の3つ分類】
この本についてお話する前に、非常に難しい本なので、私も大雑把なことしか理解しておらず、大雑把なお話しかできないことをご了承ください。
日本では「キリスト教的進化論」と呼ばれる内容ですが、一言で言えば「人類はどこに向かって進化しているのか?」と提示したものです。
これも結論(答え)からお話しますと。
「人類の意思(思想)は、全人類が同じ方向で統一される。厳密には、地球を含めたすべての生命体の意思(思想)が同じ方向で統一される」というものです。
この言葉だけだと何のことかわからないと思うので、もう少し具体的にお話します。
※ この話は「進化論」なので、少し「進化」について科学的な側面に触れる必要があるので、掻い摘んでお話します。
「地球上に存在するもの」を、テイヤールさんは以下の3つに分類しました。
・フィジオスフィア(陸・海など)
・バイオスフィア(有機生命体)
・ノースフィア(意思・思想)
地球が誕生してからこの3つが生まれた順番も、この順番になります。
最初に「陸・海」が誕生して、やがて海の中に「何かしらの有機生命体」が誕生して、それらの生命体が進化した過程で「意思(思想)」が生まれ、これも含めて進化している、という考え方です。
また、【バイオスフィア(有機生命体)】の進化は、最初は「単細胞生物」から始まり、やがて「多細胞生物(人間を含む)」が生まれて進化したことも付け加えてお話します。
◼️【人間の細胞】について
人間の体内には、成人で約60兆個と言われる数の【細胞】が存在しています。
もう少し詳細に言えば、【細胞】が集まって【それぞれの臓器】ができて、その【臓器】の集合体が【人体】です。
ここで、多くの人は「細胞は人体の一部」と考えているかもしれませんが、これは正解でもあり間違いでもあります。
正しくは「1つ1つの細胞は、人体の一部でもあり、1つの独立した生命体でもある」のです。
このように考えると、不思議だと思いませんか?
体内の1つ1つの【細胞】には、それぞれ「独立した意思」があって、各々がそれに従って行動しています。
それなのに、私たちの身体は調和が保たれて【健康】が維持されています。
こういう視点で物事を考えると、「なぜ、人間は病気になるのか?」ということよりも先に「なぜ、人間は健康でいられるのか?」ということの方が不思議にさえ思えます。
この事実に対してはテイヤールさんは、【細胞】にも「意思(ノースフィア)」があり、それが進化した結果【多細胞生物】が誕生したと考えました。
◼️人間を【地球の細胞】と考えると
次の話をする際には、「地球そのものが1つの生命体である」という考えを前提とします。
そして、今までの「進化」についても、「人類の進化」ではなく「地球自体の進化である」と捉えて考える必要があります。
そのように考えると、「人類は地球という大きな生命体の細胞のような存在である」と考えることができるのです。
そして、私たちの体内のある「1つ1つの細胞」に意思があるように、私たち人間にも1人1人に意思があって行動しています。
ここまでお話を聞いて頂けると、言わんとしていることが何となく伝わると思うのですが。
【体内の細胞】が進化した結果、それぞれが勝手に行動していても「人体の調和」という「統一された意思」の元で行動しているように。
私たち【人間】も進化していくと「それぞれが勝手に行動していても、地球の調和という統一された意思の元で行動するようになる」ということを、テイヤールさんは言っているのです。
そして、このように「人間の意思(ノースフィア)」が、「地球の調和」という共通認識を持つところまで進化することを、テイヤールさんは【オメガポイント】と呼びました。
※ 【オメガ】は宗教的な言語で「最後・終わり」などの意味があります。
◼️人間が【オメガポイント】に到達するためには:その1
【地球】も1つの生命体なので「寿命」があり、今では【人間の手】によって「地球の寿命」は縮まっていると考えられます。
テイヤールさんは「地球の終わりが来る前に、人類は【オメガポイント】に到達しなければならない」とも言っています。
そして、【オメガポイント】に到達するために、最も必要なものが【愛】だと言いました。
多くの人は、無意識のうちに「愛は尊いもの」と考えるようになっていますが、これって実は、奇跡と言えるくらい、とてもすごいことです。
皆さんは【愛】と聞いて、何を連想するでしょうか?
「家族?恋人?」
確かに「家族や恋人」を対象にすることも間違いない【愛】なのですが、テイヤールさんの言う【愛】とは、もうすこし違う種類の【愛】です。
すごく簡単にまとめてしまうと、「自分・家族・恋人・友人・全くの他人」の全てを対象にした【愛】のことです。
付け加えて言えば、「人間だけでなく、すべての生命(フィジオスフィア・バイオスフィア・ノースフィアのすベて)」に対する【愛】のことなのです。
キリスト教には「アガペー(無限の愛)」という言葉あり、キリスト教の中では「最も尊い愛」とされています。
私はキリスト教に信仰がある訳ではありませんが(今のところ、特定の信仰は持っていません)。
そんな私でも「アガペー(無限の愛)」という考え方には、深く共感します。
この「アガペー(無限の愛)」こそが、人を【オメガポイント】に到達させるものであると、テイヤールさんが言っていると考えると、わかりやすいと思います。
◼️人間が【オメガポイント】に到達するためには:その2
「アガペー(無限の愛)」ともう1つ、人を【オメガポイント】に到達させるために、必要がものがあると、テイヤールさんは言います。
それは【時間】です。
【人間】などを含めたすべての生物は、ここまで進化するのに「約46億年」かかったと言われています。
ここまで来るのに「約46億年」かかっているわけですから、人類が【オメガポイント】に到達するためには、さらに膨大な時間がかかるということです。
長い時間の中で、様々な「過ち」を繰り返しながら、少しずつ「意思(ノースフィア)」が進化していくだろうと考えているのです。
わかりにくいと思うので、もう少しわかりやすく言葉にすると。
長い歴史の中で「人は何度も戦争・紛争を繰り返してきた」けど、繰り返すことで「それはいけないこと」だと共通の認識を持つようになっていく、ということです。
この考えって、私は「的を得ていると考え」だと思うと同時に、「素晴らしい考え」だとも思います。
【戦争】って考えると、少し大袈裟なように感じるので、もっと「身近な事柄」に置き換えて考えてみると、実感しやすいと思います。
例えば【いじめ・家庭内暴力・ネットでの誹謗中傷】などで考えるとどうでしょうか?
これらの事柄を良く思う人はいないと思いますが、かと言って、これを読んだ人が「そういうことが世の中から無くなって欲しい」と願っても、これらの問題は無くなりません。
でも、いますぐにこの世界から無くならなくても、いつの日か人間の意識の中から根絶されることに繋がるかもしれない、ということをこの本は言っています。
そのように【差別・迫害・戦争】はもちろんのこと【いじめ・家庭内暴力・ネットでの誹謗中傷】など、今の日本でも身近にあることを嫌う心が「人類の未来」に役立つかもしれないと考えると。
「今、自分がそう願うことは無駄じゃないかもしれない」と思えるようになりました。
◼️まとめとして
この本を読んで、私が【環境問題】について、改めて考えたのは言うまでもありませんが。
ただ、そういった大きな問題よりも、これからの日本は、国自体がどんどん貧乏になり、「貧富の差」は広がり、その皺寄せは「多くの若い世代」に向かうだろうという、身近な問題の方がどうしても強く意識してしまうところです。
その問題は、私一人が憂いてもどうにもできないし、多分私が生きている間には解決されないだろうと思います。
でも、私が解決を望むこと自体が、未来の人たちに役立つかもしれないと考えるのであれば、私が色々なことに対して願うことも、きっと意味があるのだろうと考えられるようになりました。
最初にお伝えしたように、テイヤールさんは「科学者と神父」という立場の人だったために、彼の生前に彼の意見は認められることはありませんでした。
※ この本が出版されたのは、テイヤールさんの死後です。
そのような時代に「自分の考えがすぐに理解されないだろう」とわかっていながらも、彼は「カトリックでは禁忌とされていた考え」を発信しようと試みたわけですから。
せめて「世の中(地球)が良くなること」を願う気持ちくらいは、大切にしたいなと思いました。